
販促物管理の基本フローから解決策を考える
販促物管理を改善したいと思っていても、「どこに課題があって」「どのように対処していいのか」を悩む担当者は多くいます。その場合、最初の一歩として自社の運用フローを整理して販促物に対する考えかたを見直していくとよいでしょう。販促物の扱いや考えかたは企業によって異なります。自社に合った最適化を行う方法の一例や、システムの導入で見込める効果をこの記事でご紹介いたします。
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自社製品の管理はできて、なぜ販促物の管理に悩むのか

「自社製品」と「販促物」は同じ「モノ」でも在庫管理で相容れません。理由はシンプルで、「担当部門が異なるから」です。企業によって諸説あると思われますが、生産した自社製品は「物流部」の管理下に置かれ、販促物は、「営業企画部やマーケティング部」などが製品を販売するための施策として企画・生産されます。同企業内でも取り扱う部門が異なると、管理に対する経験値やリソースも異なってくるのです。
では、「物流部に協力してもらえば良いのでは?」思いますが、大半の販促物は商品基本情報(商品マスタ)がありません。加えて、販促物の物流はフレキシブルな対応を求められるため、自社製品のために整えられた物流インフラに相乗りしにくく、出荷単位も異なるため、物流部側にとってはスキームが合わず煙たがられてしまうのが実情なのです。
まずは知っておきたい「販促物管理の基本フロー」
まずは、「基本的な販促物運用の手順」を整理してみます。
・販促物を在庫しているのか。
・受注後に生産を行うのか。
によって順番が前後する可能性はありますが、基本的な販促物の管理・運用の流れは以下の4項目に分類されます。
【販促物管理の基本フロー】

①企画制作
社内や外部で販促物の企画制作を行います。
コストや生産計画など、効率的な調達を実行。
②保管
A:1カ所→自社、外部問わず、一つの場所で在庫の保管を行っている場合。
B:分散・直送→店舗やエリアごと、仕入先などの外部で保管している場合。
③受注
営業や顧客から、ニーズに応じて販促物の注文が入る。
C:注文情報は、メールや電話、FAXなどで受注担当者へ知らされる。
D:注文情報は、システムを通して受注担当者へ知らされる。
④出荷
販促物ごとの在庫保管方法や生産方法によって異なる。
自社→担当者が保管スペースからピッキングを行って発送準備を行い出荷する。
外部→管理委託倉庫や生産工場など、外部から出荷を行う。
――――――
先述した通り、企業の運営方針によって①~④の順は異なります。
例えば、「販促物を在庫している場合」は、おおむね図解の通りのフローになります。一方で、「受注後に生産を行う場合」で、店舗ごとに在庫保管を行う企業は、スタートの①販促物の企画①から③④②の順で運用が行われているでしょう。ご自身の企業の運用がどのような順を辿っているのか…改めて認識してみると、改善点も探しやすくなります。
順番の前後はあっても、それぞれの工程で発生するトラブルや課題には共通点があります。次項から、各工程で多く発生する課題を提示していきます。
販促物管理の基本フロー①企画制作
販売促進活動に適正な販促物の企画および制作を行うこの工程では、「適正なモノを適正なコストで生産する道筋をつくる」ことが大切になります。この部分の歯車がかみ合わないと、後々影響する潜在的な課題につながる可能性が高くなるので注意深く進めたい最初の工程です。中でも重要になる「コスト」の課題をクローズアップします。
適正コストの判断はできていますか?

コスト効率が最も良い発注をしたはずが、過剰在庫になってムダが発生していませんか?
ある企業の実例を挙げます。販促物は営業部管轄で企画生産されていて、在庫管理は外部の倉庫へ委託をする運用が行われていました。ごく普通に思えますが、この企業は、「費用構造の捉えかたのムダ」に気付かず、コスト圧縮方法を模索していました。
費用構造とは、「事業活動を行う中で、どのような項目に費用をどの程度かけているのかの詳細や、全体像を捉えること」を意味します。この企業の販促物制作に対する費用算出は、昔からの慣わしで「商品1個を販売するために販促物は何円であるべきか」という考えで決定していました。ある程度の販売目標数値は考慮するものの、販売促進費用(以下、販促費)の決定根拠は“昔からのルール”だったのです。
例えば、A商品1個に対する販促物のコストが50円だったとします。販促物の発注は、この「50円」という単価を絶対的な条件として扱われるため、以下のような見積もりがあった場合、
・5千部で単価100円
・1万部で単価50円
迷わず後者の1万部が選択されていました。ルール通りではありますが、「本当に1万部必要なのか?」という部分は置き去りにされています。ほかにも、「安く作って置いておけばいい」「この前足りなくなったから、機会損失になるくらいなら・・・」という安易な考えがプラスされて生産された結果、長年在庫として放置されてしまう事象へつながっていくのです。
加えて、この単価には保管費用は含まれておらず、発送費用などの別途経費が発生しているケースもあります。これらの費用の全てが、営業に必要な経費として「販売費及び一般管理費(損益計算書)」として計上されます。その時の販売量や計上後の判断基準にもよりますが、当初算出していた「商品1個を販売するのに販促物は何円であるべきか」という単価からは乖離していそうだな・・・と、容易に想像できるでしょう。
「ムダなものを作っても単価を安くする」。この昔から続く捉えかたが、この企業の「本当に必要?」という議論を生む原因の一つになっていました。本来、販売計画に対する進捗に応じて販促物の生産を行うのがベストではありますが、難しいのが現実です。その中で、ムダな販促物の生産やコスト圧縮の努力をしていくことが必要になっています。
解決方法
コストの考えかたは企業によって全く異なります。正解がない領域だからこそ、自社に合う生産方式で制作をするための見直しが大切です。おおむね、企業の販促物生産は、以下3つのどれかに当てはまります。
1.コスト重視の経済ロット型。
2.欲しい時に必要な数を作る受注生産型。
3.経済ロットに近づくよう、一定数量の受注生産を目指すハイブリット型。
キャンペーンや新商品のタイミングなど、企業によって生産が集中するタイミングは異なります。最適な生産パターンは事業運営によって異なるため、どのような計画値を設けるのかが重要です。
最適な生産方式や計画値のPDCAを繰り返すには、好まれる販促物の把握や在庫の流動性を正しく把握することは欠かせません。これらのデータがあるのであれば、弊社が印刷事業で培ったノウハウから最適なパターンをご提案することも可能です。
次項から説明する②③④の最適化を図ってから、この①に立ち返って見直しを行ってみることをおすすめします。
販促物管理の基本フロー②保管
生産した販促物の在庫保管は、販促物の需要とともに在庫品の移動が発生するため、次項「③注文」と密接する工程です。ここで注視したいのは、「保管している販促物の在庫数の把握ができているか」になります。
販促物の在庫数は把握できていますか?

リアルタイムの在庫数を活用した効率的な運用はできていますか?
販促物の在庫切れや過剰在庫に悩みを抱えていませんか?
外部倉庫で全店舗分の在庫管理を行う場合・本社で行っている場合・営業所単位で保管を行う場合も同様に、在庫数の把握は共通の課題として挙げられる項目です。要因は以下の例のように、
・在庫管理エクセルを見ると、あと5冊在庫があるはずなのに、実際の保管場所を見たら在庫がない。
・営業所の一角にある在庫保管場所の奥は何が置いてあるのか分からない。
・外部倉庫との在庫数の共有は月に1回のみ。
そもそも在庫数を確認する手立てがない運用から、関係者間のコミュニケーションが問題になっているケースなど、さまざまな要因が存在します。
何らかの理由で不動在庫化する販促物もあれば、在庫切れで機会損失が生じてしまうくらい人気の販促物もあります。企画クオリティの影響もありますが、何より大切なのは、「ニーズが発生した時に、在庫が保管されている状態にしておくこと」が第一です。そのためには、販促物のラインアップ(種類)と、それぞれの在庫数をリアルタイムで把握できる状況を作ることが重要です。
「今この瞬間」の在庫数が把握できれば、在庫数に応じた追加発注も可能になります。また、不動在庫が発生した場合の対策として活用の場を試案したり、店舗間移動で在庫の消化を図ったりなどの対策もできるでしょう。作った販促物を効率的に活用するには、現在庫数の把握がキーになります。
解決方法
在庫管理情報との連携ができるシステムを導入することで、リアルタイム在庫数を複数のメンバーが同時に確認することができ、それぞれの業務へ生かすことが可能になります。
TS-BASE 受発注では、リアルタイム在庫情報をシステム上で確認ができ、注文者が使用する注文サイトへ反映することも可能です(システムの活用範囲によって異なる場合はございます)。また、「発注点管理」というシステムの機能を活用することで、在庫数が一定数量まで減少した際、自動アラートで認識できるようになります。在庫切れ防止に有効な発注点アラートは、ニーズに備える体制構築に生かせる機能です。
不動在庫の把握は、定期的なデータ確認が必須です。TS-BASE 受発注では、商品ごとの「起点在庫・入庫数・出庫数・期末在庫」が自動集計できるため、倉庫担当者へデータ提出依頼をしなくても知りたい場面でいつでも観覧することが可能です。商品の分析を行うことで、不動在庫品への対策や次なる企画への活用などができるでしょう。
▼TS-BASE 受発注の機能「入出庫・在庫数の実績出力」の詳細
販促物管理の基本フロー③注文
販促物のニーズが発生した時に注文をする人物は、営業担当者や支店の事務員、FC店舗の担当者など、企業によって異なりますが、共通しているのは、「受注側とのコミュニケーションが発生する」ことです。この、「注文者と受注者とのやり取り」を、いかにスムーズに完結させるのかが注文部分の課題解決に直結してきます。
電話・FAX・メールでの注文作業に不満がありませんか?

手書きやエクセルシートでの受発注業務のミスに悩まされていませんか?
注文に関わるコミュニケーションに負荷がありませんか?
注文工程は、「注文者」「受注者」双方に課題が発生します。
「注文者」が抱く課題は、注文作業の煩雑化です。FAXやメールに添付する「専用注文書」への記入に時間がかかる、注文可能な販促物なのか判断に迷う、電話での注文は口頭でのやり取りにミスが発生しやすいなど、注文業務へハードルを感じているケースが挙げられます。
「受注者」が抱く課題として、アナログ作業による業務負荷があります。電話やメールで受注した注文を専用エクセルシートに転記する、工場へ発注するためのフォーマットへ移し替えるなど、同様情報を複数カ所へ転記する作業が発生し、その作業にリスクが多く潜んでいます。商品が在庫切れだった場合は、注文者とコミュニケーションを図って方向性を決める必要があります。受注者は、これらの作業を定められた時間で行う必要があり、遅延すると出荷業務へ影響してしまう責任が発生しています。
必要な時に必要なタイミングで手元に販促物がないと、サービスの質に関ってしまうため機会損失の可能性も高まります。注文者のニーズに最短で応えられる運用を軸に、受注者の業務負担を軽減させる手段の確立が大切です。
解決方法
Web注文の導入は、さまざまなアナログ作業脱却への第一歩になります。
TS-BASE 受発注では、「注文サイト」というWeb注文の仕組みがあります。大手通販サイトと同様の操作性は誰でも簡単に注文ができます。システム間の連携で、リアルタイム在庫数の表示もできるため、注文可能数量は一目で確認ができます。
Web注文で発注が行われると、データ化された注文情報は出荷まで一気通貫で活用されていきます。受注管理者は、データ化された注文情報に対してシステム内で操作するようになるため、新たな入力作業は削減されます。注文の取りまとめ作業などもシステム内で処理できるため、リスクが潜む作業の多くがシステムにより自動化し、効率的に業務を行うことが可能になります。
それぞれが欲しい情報は、システムの管理画面から自由に確認できるようになるため、電話やメールでの確認業務を行うことなく、円滑なコミュニケーションが実現されます。
▼TS-BASE 受発注の機能「商品画像(サブ画像)登録」の詳細
販促物管理の基本フロー④出荷
販促物を注文者のもとへ発送する作業では、「納期」というキーワードで多くの課題が発生します。外部へ販促物の保管を委託している場合でも、社内の一角に保管場所がある場合でも同様に発生し、注文者・受注者の双方に関わる「納期の問い合わせ」が最も課題になりやすい項目です。
納期の問い合わせ対応に負荷がありませんか?

電話・メールでの納期や出荷状況確認に時間がかかっていませんか?
販促物の保管場所がどこであれ、発生しているのが「納期や出荷に関する問い合わせ」です。中でも最も多いのは、納期に関することで、注文直後の予定納期や、出荷作業の進捗確認などが頻繁に発生し、注文者・受注者(運用によっては倉庫担当者)の工数増加につながっています。
また、注文時に在庫切れが発生していた販促物を追加生産している場合、更に状況が複雑になります。注文者目線では、生産や出荷の状況は全く把握できないため、担当者へ問い合わせを行うほかありません。受注担当者も、発注した工場や保管先の倉庫から明確な納期回答を得るまでは、曖昧な回答をするしかありません。
いつどのような情報が更新され、どの情報が最新なのかが不透明なことや、確認方法が電話・メールというある意味閉鎖的な中で行われることは、問い合わせ回数増加の要因です。これらを解消するためには、情報の見える化や、情報共有方法の見直しが必要になるでしょう。
解決方法
出荷関連のコミュニケーションにも、Web注文の導入・在庫管理情報との連携ができるシステムの導入が効果的です。
TS-BASE 受発注の注文サイトでは、注文ごとの内容や出荷進捗の確認が可能です。出荷担当者は、注文サイトからシステムを介して共有された注文データをもとに、各帳票を出力して出荷作業を行います。出荷の進捗情報もシステムで共有されるため、注文者は自分が希望した「お届け希望日」通りに出荷してくれるのか、現在はどの出荷ステータスなのかなどの確認を自ら行えるようになります。
全情報がシステムに集約されるため、情報の確認・更新ともに業務の標準化がしやすく、情報の転記作業が減少することで、コミュニケーションロスのリスク低減も可能です。
▼TS-BASE 受発注の機能「お届け希望日設定(納期指定)」の詳細
社内が変わるタイミングが、フローの見直しのチャンス!

会社の方針や事業スキームが変わるタイミングは、販促物管理業務最適化のチャンスです。例えば、「今までの集約型の営業をエリア営業に分け、各エリアで手厚く営業しよう」などの営業体制の変更など、販促物を活用する人や店舗が動くタイミングが最良のタイミングだといえます。目まぐるしく忙しい時ではありますが、変化の波にのって、ムリをしてきた業務の最適化を目指しましょう。
自社の現運用フローを可視化させ、「管理方法に無理はないか」「担当部門が適切なのか」そして、「販促物自体の見直し」をなどの議題に挙げ、何を改善していきたいのかを明確にすることをおすすめします。
販促物の最適化には、企業や採用している販促物に合う「考えかた」が大切です。大枠の基本フローは各社共通だと思いますが、それぞれの業務環境や予算によって最適な手段は異なります。自社の特性にも意識を向けて再考してみるとよいでしょう。













