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AI受注は本当に効果的?導入前に整えるべきデータ基盤とは

AI受注は、データが整備された環境でこそ効果を発揮します。データがバラバラな状態でAIを導入しても、期待した効果は得られません。
2024年度の総務省調査によると、日本企業の約半数が生成AIの活用方針を定めており、受注業務でもAI活用への期待が高まっています*。しかし、AIは万能ではありません。データがきれいに整備されていなければ、AIは正確な判断ができず、かえって手間が増える可能性があります。この記事では、AI受注の可能性と限界、そして導入前に整えるべきデータ基盤について解説します。
<出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」(2024年度調査)>

AI受注への期待と現実

生成AIの普及により、受注業務の自動化への期待が高まっています。しかし、AI受注には適用できる業務とそうでない業務があります。

AI受注とは何か

AI受注とは、AI技術を活用して受注業務を自動化する取り組みです。具体的には、以下のような技術が含まれます。

  • AI-OCR(注文書の読み取り自動化)
  • 需要予測による自動発注
  • 異常検知による誤発注防止
  • 生成AIによるデータ補完・整形

これらのAI技術を組み合わせることで、手入力の削減、ミス防止、24時間対応などが可能になります。

AI受注で期待される効果

AI受注の導入による効果を多くの企業が望んでいます。

  • AI-OCRを用いた手入力の削減
  • 異常検知AIによるミス防止
  • AIチャットボットによる24時間対応
  • 複雑な業務のAI補助・補正による属人化の解消

とくに複雑な業務においては、AIが過去の実績やデータをもとに分析することでの効率化を多くの企業が期待しています。しかし、AIは万能薬ではありません。ここからはAIの限界やAIがうまく機能する条件を整理していきます。

AI受注の限界

AI受注を導入する際、いくつか留意しておくことがあります。ここからは「AI受注の限界」として3つご紹介します。

AI-OCRの精度は100%ではない

AI-OCRでは活字の読み取り精度は99%以上ですが、手書きは80%程度にとどまります。FAXの受注ミスを防ぐためには、目視による確認が必須です。その際、従来通り特定の人しか解読・修正ができないような属人化の課題は依然として残ります。

属人化が起こる原因や対策はこの記事でも詳しく紹介しています。

複雑なルール判断には人の確認が必要

取引先ごとに異なる受注ルールや、例外的な処理には、人の判断が必要になります。AIはルールが明確な業務には強いですが、曖昧な判断は苦手です。

データが整備されていないとAIは機能しない

企業名の名寄せができていない、フォーマットが統一されていない、必要な情報が漏れているなど、データがバラバラな状態では、AIは正確な分析・判断ができません。

これらの課題は、AIが台頭する以前から受発注業務のミスの要因として挙げられていたことと同じです。人が行っていた業務のうち、属人化・ミスの温床となっていたような業務をAIに移行するには工夫が必要です。

受発注業務で発生するミスの原因はこちらで解説しています。

AI受注が機能する3つの条件

AI受注が効果を発揮するには、3つの条件が揃っている必要があります。この条件を満たさない環境では、AIを導入しても期待した効果は得られません。

条件1|データがきれいに整備されている

AI受注の前提条件は、データが標準化されていることです。

企業名の名寄せができている

フォーマットが統一されている

必要な情報が漏れなく記録されている

同一企業が「株式会社〇〇」「〇〇株式会社」「〇〇(株)」など複数の表記で登録されていると、AIは別企業として認識してしまいます。取引先マスタとして企業名の名寄せが完成している状況が理想でしょう。
さらに注文書のフォーマットが取引先ごとにバラバラだと、AI-OCRの読み取り精度が低下します。項目名や配置が統一されていることが理想です。そのうえで、注文日、商品コード、数量、取引先コードなど、受注処理に必要な情報が漏れなく記録されていることが重要です。

条件2|受注ルールが明確に定義されている

AIは、明確なルールに基づいて判断します。そのため、情報の蓄積方法・ルールが明確に定義されている必要があります。

受注処理のルールが明文化されている

例外処理のパターンが整理されている

「この商品は最低ロット10個」「この取引先は掛け率80%」など、受注処理のルールが明文化されていることが必要です。これらのルールが、AI受注に移行する場合にAIが稼働するための条件となります。
「この取引先だけは特別対応」といった例外処理や「この商品が注文された場合は、現場の状況によって都度判断する」といった個別対応が多すぎると、AIは対応できません。例外処理のパターンを整理し、ルール化することが重要です。

条件3|データ量が十分にある

AIの学習には、一定量のデータが必要です。

過去の受注データが蓄積されている

データの質が担保されている

需要予測や異常検知には、過去の受注データが必要です。最低でも1年分、できれば2〜3年分のデータが蓄積されていることが望ましいです。データ量が多くても、誤入力や欠損が多いと、AIの学習精度が低下します。データの質を担保する仕組みも合わせて備える必要があります。

AI受注導入で失敗する企業の共通点

イメージ画像 出典:Shutterstock

AI受注の導入に失敗する企業には、共通するパターンがあります。ここでは、実際の失敗事例をもとに、陥りやすい落とし穴を解説します。

失敗パターン1|データ整備を後回しにする

ある企業では、過去の注文ログをAIに取り込んで営業計画を立てようとしました。しかし、企業の名寄せができていない、フォーマットが様々、時代によって残している情報が異なるといった問題があり、注力企業の絞り込みやターゲティングができませんでした。

結果、絞り切れていない情報を人の手で全部見直すことになり、最初から人でやった方が早かったという結論に至りました。
そのためこの企業では、まずはきちんと注文ログが残る形で運用しようと、業務フローや既存システムの活用を見直すことになりました。AIを活用した分析を効果的にするためには、AIが加工しやすいきれいなデータの蓄積が重要です。

失敗パターン2|AIを万能と考える

「AIを入れればすべて自動化できる」という誤解は、失敗の大きな原因です。
エクセル受注業務はAIで代替できる部分もあります。単純な転記作業や、定型的な受注処理は、AIで代替できる可能性があります。
しかし、業務が複雑になるとAI側でのルール指定が難しくなります。取引先ごとに異なる掛け率、最低ロット、納期ルールなど、複雑な条件が絡んだ注文を「個人の感覚や都度の判断」で処理していると、AIへの指示が難しくなったり、AIが正しく処理できなくなったりします。その結果、人の目での確認が厳格化し、かえって業務負荷が増す可能性があります。この場合、受注に特化した既存のシステムを導入する方が効率的です。

失敗パターン3|基幹システムとの連携リスクを軽視する

受注・営業活動に関する大量のデータを基幹システムで一元管理している企業も多くあります。その場合、基幹システムとAIを直接連携させることも検討に入るでしょう。しかし、基幹システムとAIの連携には多くのリスクがあります。ここでは代表的な連携リスク3点を紹介します。

【リスク1】AIの誤動作によるデータ書き換え

AIと基幹システムの連携に使用しているアカウントが更新権限を持っていると、AIの誤動作によって企業の根幹である基幹システム側のデータが書き換えられる危険性があります。

【リスク2】権限逸脱

AIが基幹システム上でユーザー本来の権限を超えた操作や処理を実行する可能性もあります。

【リスク3】間接的プロンプトインジェクション

サイバー攻撃の一種で、外部データ(PDF・メール)にAIに対する指示が仕込まれていた場合、AIが通常の指示と勘違いし破壊的操作を実行するリスクがあります。AIで分析しているつもりが、自ら攻撃を招く状況はどの担当者も望んでいないでしょう。

AI受注に備えた受注システム導入の重要性

上記の失敗パターンから言えるのは、受注業務そのものをいきなりAIで自動化するのではなく、受注業務の効率化には受発注システムなどの活用から始めて、AI受注のためのデータ整備・蓄積を進めるのが望ましいということです。
そのうえで、システムで得られる受注情報や在庫増減のログ、周辺情報(注文時アンケート、備考など)をAIに連携することで、生産計画や営業活動に役立つデータの利活用が実現できるでしょう。

将来的なAI受注の効果を最大化するには、まずデータ基盤を整えることが先決です。受注システムの導入により、きれいなデータを蓄積できる環境を整えていきましょう。

受注システムによるデータ標準化

受注システムを導入することで、データ標準化が実現します。
システムを通して注文方法を統一することで、取引先ごとにバラバラだったデータを統一できます。さらに、注文日、商品コード、数量など、受注処理に必要な項目をシステム上で必須にできるため、データの欠損を防ぐことが可能になります。

受注時のカスタム項目による周辺情報の蓄積

一部の受注システムでは企業独自の項目を用いて情報収集が可能です。たとえば、「この商品をどこで知りましたか?」「用途は何ですか?」といった注文時アンケートを設定できます。こうした情報は、基幹システムでは管理されていないことも多い受注に関する周辺情報ですが、将来の分析・AI活用の糧になります。

TS-BASE 受発注では業種・業態に応じた独自項目を設定でき、自社の業務に最適化されたデータ蓄積が可能です。備考欄や独自項目を活用することで、受注の背景にある顧客ニーズや購買動機を記録でき、AI時代のマーケティング分析や需要予測の精度向上につながります。

在庫データ・入出庫データの連携

受注データ・在庫データ・入出庫データを一元管理することで、AIで活用しやすい形の元データを蓄積できます。これらの受注に関するデータが分散していると、AIで処理を行う前に名寄せや統合作業といったデータ加工が発生しますが、最初から一元管理されていれば、その手間を省くことができます。

AI時代に備える受注システムの選び方

AI受注を見据えて受注システムを選ぶには、データ蓄積機能と柔軟性が重要です。将来のAI活用を前提に、今から準備を始めましょう。

まず、受注データ・在庫データ・入出庫データを一元管理できるかを確認しましょう。CSV出力機能があれば、蓄積したデータを外部のAIツールや分析ツールに取り込むことも容易になります。

次に、業種・業態に応じた独自項目を設定できるかが重要です。注文時アンケートや備考などの周辺情報を蓄積できる機能があると、将来のAI分析に役立ちます。こうした周辺情報は、顧客の購買動機や利用シーンを理解する上で貴重なデータとなり、需要予測や商品開発の精度を高めます。

最後に、AI受注=すべての受注業務をAIで行うのではなく、業務は専用システムで対応し、そこで蓄積されたデータをAIを活用して分析することを検討しましょう。業務とAIによる分析を分断することで、情報漏洩などのリスク回避にもつながります。

受注業務のAI活用の可能性とデータ基盤整備の重要性

AI受注は、データが整備された環境でこそ効果を発揮します。データがバラバラな状態でAIを導入しても、期待した効果は得られません。

AI時代のスタートダッシュを切るには、今からデータ基盤を整備することが重要です。受注業務のデジタル化を進め、将来のAI活用・分析に備えましょう。適切な形式のデータがあれば、AIは正確な判断ができ、業務効率化や販売戦略分析の効果を最大化できます。

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「TS-BASE 受発注」編集部
「TS-BASE 受発注」編集部
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